世界の経済学者の多くは、2022年は「経済停滞」から「回復・活性化・成長」と予測、不安要素としては「コロナ長期化」と「中国」の2点を挙げている。
他方、懸念される社会現象として「スタグフレーション」が取り上げられている。Stagflation、Stagnation(経済活動の停滞)とInflation(物価の持続的上昇)が併存する現象を表現した造語である。従い、この造語は、今年起きるであろう現象には相応しくない。「停滞」ではないからだ。
「経済活性化」と「企業業績改善」が期待される中での物価上昇、「便乗値上げ」のチャンスも膨らみ「企業収益」は想定以上に向上する。当然、「賃上げ」も実施するだろう。だが、「中途半端な賃上げではインフレをカバーできない」と言う懸念が日に日に大きくなっている。岸田政権、選挙を控え「賃上げ」を後押しする様だ。だが、「一桁台の賃上げ」では「2桁台のインフレ」をカバー出来ない。「低い給料」、「安い物価」の「バランス」、日本が長年保って来た「バランス」が崩れかけている。「給料と物価を体系的に考え直す時が来た」と言う事だろう。
エネルギー、食糧、諸鉱物資源等々、そして、円安、輸送費、パンも豆腐・納豆も、人件費、電気代もガス代も上がる。日本独自の現象も起きるだろう。「政治貧困の結果」の蓄積に起因する「歪み」がある。それが、世界に比較し、異質の「給料・物価構造」を造り上げてきた様だ。
最近、「貧富格差の拡大」「富裕層の増加」が注目され、「富の分配」が検討されている。だが、「裕福」と「貧困」の基準が不明瞭、10万円給付に際しても、収入の上限・境界線をどこに定めるか、「共稼ぎ世帯」の場合をどうするか等々、多くの問題が提起されたが、自治体任せで、うやむやになったままである。では、「金持ち」の定義は、どうなっているか調べてみた。
世界一般論では、
①富裕層・資産100万ドル以上 ②超富裕層・資産500万ドル以上 ③ウルトラ・ハイネット・ワース・資産3,000万ドル以上、とされている。因みに、フォーブスの2021年度版世界長者番付では、資産10兆円を超す長者は7人、1位のアマゾン・ベゾスの資産は19.29兆円。
世界不平等研究所は、
上位層10% 中間層40% 下位層50% と設定している。上位層は世界の個人資産の75.6%を保有するのに対し、下位層はたったの2%、資産ゼロに等しい。
日本に関しては野村総合研究所が「日本国内富裕層の保有資産規模と世帯数」「世帯の純・金融資産保有額」(2019年)と言うレポートを公表している。
超富裕層・・・資産5億円以上・・・8.7万世帯(約20万人)
富裕層・・・資産1億円以上5億円未満・・・124.0万世帯(約285万人)
準富裕層・・・資産5,000万円以上1億円未満・・・342万世帯(約790万人)
富裕者合計・・・資産5,000万円以上・・・474.7万世帯(約1,095万人)
富裕者は国民全体の約8.76%
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非富裕者層
アッパーマス層・・・資産3,000~5,000万円・・・712.1万世帯(約1,640万人)
マス層・・・資産3,000万円以下・・・4,215.7万世帯(約9,700万人)
非富裕者は資産5,000万円未満・・・4,927.8万世帯(約11,330万人)、日本人の約91%がこの層に入る。
マス層・・・「一般的収入・金融資産の層」(78%)、平均資産は約1,600万円。
アッパーマス層(13%)・・・マス層より多少裕福、平均資産は約4,500万円。
日本人の85%がサラリーマン、平均年収420万円、日本人の30%強が貯金ゼロ。
日本の場合、富裕層は見えるが、非富裕者層=中間層・下位層が良く見えない。貧困層は何処が境なのか? 何を以て貧困とするのか?
日本人の給料、高度経済成長後の1970年代に急上昇した。だがその反動だろうか、1980年以降、給料の伸び率は鈍化し、現在に至っている。背景には、
① 海外進出・・・生産拠点を賃金の安い海外に移転
② 女性の社会進出・・・女性差別(低賃金)・・・賃金上昇抑制効果
③ 「共稼ぎ」の一般化・・・過剰労働力を生み出す
④ 派遣社員・契約社員の増加(低賃金・解雇容易)
⑤ 外国人労働者、研修員名義の期間労働者
⑥ 特に2000年以降だが、ICT・AI・DX・・・合理化=人員削減
等々、賃金上昇を抑制する様々な条件が揃っていた。
特に「共稼ぎ」一般化の影響は大きい。夫婦の収入で生活できる状態、多少「可処分所得」は増える。だが、片方でも解雇されれば生活できない。収入安定を維持・確保する為、低賃金を受け入れる夫婦も多い。昔は「主一人」の収入で生活するのが一般的であった。共稼ぎ夫婦、「政治も安定志向」だろう。家庭優先の考え方は、保守的になりがちとなる。
さて日本、年々「高齢者比率」が高くなり、DINKSは増え「少子化傾向」は止まらず、単身世帯、シングルマザーも増えている。日本全体の世帯数は年々増えている。核家族化が一般化、更に「共稼ぎ」が分裂すれば世帯数は増える。結果として「単身者」が増える。保険の問題もあるが、単身者は何か不幸があれば生活に窮する。
マス層、インフレの嵐が吹けば生活に窮する事になる。就労者であれば「我慢・我慢」となるが、非就労者・年金生活者は打つ手がない。日本の場合は多少余裕があるだろうが、貯金ゼロの30%は途方に暮れる状態に陥る。
政府は「新資本主義」への対応が必要と叫んでいるが、未だに研究の準備段階である。「分配」と言っても、財資をどうするか? 誰がどうやって分配するか? 対象者の条件は? いつ始めるか? 選挙前か? 選挙後か? 何も決まっていない。貧困者の定義がない。
インフレ対策、賃金体系の見直し、貧困者救済、直近の大きな課題になりそうだ。商品価格見直しも・・・。「日本の物価は安すぎる」と言う声があるが、どうなのだろうか? 価格を上げればインフレを助長する事になる。
「世界不平等研究会」が「世界不平等レポート2022」を公表した。欧米等世界70カ国100名を超す学者で構成される本会、世界的な「不平等」の実態を調査・解析し定期的に世界に発信している。World Inequality 2022(2021年推定値)
本レポートは貧富格差の急拡大傾向は止まず、その延長線上にある危機に対し、「新時代対応」を訴えている。
世界の成人人口(約50億人)
(最上位層 1% 0.5億人)
上位層 10% 5億人
中間層 40% 20億人
下位層 50% 25億人
世界総人口は約77億人
個人資産(世界全体の個人総資産比)
(超上位層2,750人➝3%・・・13兆ドル)
(最上位層1%➝ 37.8%)
上位層10%➝75.6%
中間層40%➝22.4%
下位層50%➝2%
年間所得(個人総所得比)
(上位層1%➝19%)
上位層10%➝52%
中間層40%➝39.5%
下位層50%➝8.5%
上位層1%が世界の個人総資産の37.8%を保有し、上位層10%が世界の年間個人総所得の52%を獲得する。50%を占める下位層の資産保有は個人総資産の僅か2%、年間総所得の8.5%の収入しかない。「富める者は益々富み」、「貧困に喘ぐ者は益々貧しくなる」、「格差は年々拡大している」と強調している。
貧富格差の拡大、「資本主義の宿命」と言われている。社会問題と言われて久しいが、「経済成長が下位層を救う」「経済成長は下位層の収入増に寄与する」と言う主張が主流、各国政府、経営者保護を優先し、貧困格差問題は無視されてきた。中国も「同じ穴の狢」だろう。
「コロナ禍」のこの2年、貧富格差拡大のスピードが速まった。ICTに代表される新産業群、特にGAFA等の大躍進と「巨額の富の蓄積」は、「新時代」の象徴と言える。
一方、「時代の変化」に「政治」は付いて行けず、特に「税制」等は旧態依然、お蔭で「新産業」は「合法的」に「ぼろ儲け」している。加え、「国境」が定かではない新産業、「税制」や「行動規制等」の「世界統一基準」を設定するのは非常に難しい。そこにコロナ禍、「経済活動一時休止」の嵐が吹き荒れる中、新産業には「順風」が吹き、下位層には「失業」と言う「寒風」が吹き荒れた。これも貧富格差拡大の一因となっているだろう。
2022年は、「貧富格差問題・貧者救済」の一環として「富の分配」「分配資金確保を目的とした税法改訂」が議論されそうだ。侃々諤々の議論となるだろう。だが、「分配」が実現されても「貧富格差問題」が解決される訳ではない。格差拡大の根本にあるのは資本主義体制、資本主義体制を変えなければ、根本的解決は不可能だろう。
資本主義体制を支えているのは、「自由・平等」を基本とする「民主主義」、そして「民主主義国家」を支えている基盤は「多数決」を鉄則とする「民主選挙」・・・。「民主選挙」の大前提は有権者全員が「自由・平等」である事、「その自由・平等」は「社会環境」「生活環境」に影響される。「教育」も選挙に大きな影響を与える。
兎も角、選挙前に何をやっても選挙に勝てば「正当」「無罪放免」と見做される。「多数決の原理」遵守が鉄則の世界、「勝てば官軍」となる。従い、民主主義国家で、政治家が一番重要視するのは、「政策」ではなく「選挙」となる。支持者確保の為の政治、「差別政治」が政策の基本になる。
多数を占める「下位層と学生」、何故か「保守化」している。その背景が判れば、「謎」が解けるだろう。
民主主義の発想は数千年、資本主義の時代は僅か200~250年、その相関関係を見直す必要がありそうだ。
「多数決」に代わる決定方法はあるのだろうか? 「力」以外の方法、検討する意味はあるだろう。
Xmas後の27日、アメリカの新型コロナ新規感染者は44万人を超え、その後、欧州ではフランス20万人超、イギリス18万人超、スペイン10万人超、イタリア約10万人、米欧各国は続々と過去の記録を塗り替えている。第XX波襲来、起きるべくして起きた現象だが、これほどの数になるとは思っていなかった様だ。幸い、感染率は高いが、比較的重症率が低い。死亡率も低いので手を抜いた様だ。それにしても驚異的な数である。
Xmas休暇中の「過ごし方」や「移動方法」は様々だろうが、「3密」「歓談」「ハグ」「久しぶりの再会」「友人通しの祭り騒ぎ」・・・、開放感を満喫した者は多いだろう。「快楽の代償」「自由行動の代償」、感染者急増は予想できた。
米欧の新規感染者、ワクチン接種を拒否し、マスク着用も拒否する者が圧倒的に多い。当然の帰結だろうが、覚悟の上での拒否、中々折れない。ワクチン接種を拒否する人達、体質的に無理な人もいるだろうが、「宗教的理由」により注射を拒否する者、「強制される事への反感」=「自由を奪われる事への反感」、「政治的理由」による拒否、そして「後遺症に対する恐怖」等々、様々は理由がある。
「ワクチン接種による後遺症」「コロナ感染による後遺症」、未知の課題であり無視できない。だが、将来的課題、今怖がっても仕方がない。
「自由の権利」を規制されたくないと言う気持ちは判る。
だが、アメリカの政治的悪用は見苦しい。「ワクチン拒否」と「マスク拒否」は見苦しいを超え「悪質」である。米国内の犠牲者が82万人を超えた現段階でも「コロナなど通常の風邪みたいなもの」と主張している。自分の家族が感染し死亡したらどうするのだろうか? 「飲む錠剤」が出たらどうするのだろうか? 拒否? それとも「こっそり飲む」のだろうか? 彼らは、「自由」を悪用し騒いでいるにすぎない。全く子供じみている。これがアメリカの実態だろう。陰にトランプが見え隠れするが、そのトランプは、早々ワクチン接種済(3回目?)らしい。
「自由・平等」は人間社会の最重要な「権利」であり「主張」だろう。だが、「自分NO1」と言う発想は如何なものか? 「アメリカNO1」の発想と同質だろうか? 意識的にコロナに感染し、「抗体」を作れと言う説もあるらしいが・・・。自分はコロナに耐える体力があると過信している者が多い様だが・・・。
東京都の今日(30日)の新規コロナ感染者は64人、確実に増えている。「規制緩和」と「気の緩み」の影響だろう。Xmasと正月、確実に「3密」も「人流」も「会食・飲み会」も増える。1月初旬の新規感染者は、かなりの確率で増えるだろう。だが、米欧と比較し、「桁違いに少ない感染者」「犠牲者」である。世界は「日本の謎」と見ているが、理由は未だに判らない。
「水際」と「米軍基地周辺」は要注意だが、その他は「どこまで」「どの様」な対策を打つのだろうか?
「油断大敵」だが、「過ぎたるは及ばざるがごとし」「過剰防御」は「反感」を買う。
「感染者は世界比較では少ないが、爆発的に感染拡大する可能性はある。注意を怠らないように」と訴え続けるしかない様だ。
日本の子供への接種は進んでいるのだろうか?
コロナ騒ぎ、当分続きそうだ。
P.S.
29日のアメリカの新規感染者は48万6,000人超で過去最多を記録。3日連続40万人以上。
「分断」と「混乱」の渦に迷い込んだ世界、その渦を複雑に攪乱しているコロナ、そして人類の最大の課題となりつつある「地球温暖化」問題、先が見えない儘、年を越しそうだ。
12月10日、アメリカ南部6州を記録的な巨大「トルネード」が襲い、約100人の犠牲者が出た。16日、フィリピンを襲った「台風22号」、犠牲者は375人・・・、ブラジルは大雨でダム決壊、大洪水、世界中で「季節外れの異常気象」が猛威を振るっている。
日本、北日本上空5,000mに氷点下45度以下の寒気団が流れ込んでいる。「極渦」南下と「偏西風蛇行」の影響だろう。寒気団の気温は通常より30度程低い。加え、「ラニーニャ現象」、日本南方の海水温が上昇し、積乱雲が発生しやすくなっている。南に蛇行した偏西風が高湿度になった大気を西日本~北日本(日本海側)に送り込む。その大気と寒気が衝突、大雪と強風を齎す。過去何回も経験している現象だが、今回は記録的な「凄まじさ」(降雪量)になりそうだ。
10~11月、コロナ感染者減少傾向が顕著になった。世界は一時「終息ムード」となり、「日常生活」も「経済活動」も平常化しつつあった。開放感か「お祭り騒ぎ」も増えた。スポーツ・イベントも平常化に傾きつつあった。そこに「オミクロン」、12月に入り感染者急増、欧州諸国や米国の一部の州は「第XX波襲来」と判断し「ロックアウト」に踏み切っている。
10月以降、世界各国で「予期せぬエネルギー不足」問題が発生した。コロナ禍で経済活動が低迷、エネルギー需要が大幅に縮小、当然「供給量」も極限まで絞られ、エネルギー関連ワーカー数(輸送も含む)も大量に削減された。「生産」も「在庫」も大幅に縮小された。それが世界同時に需要復活、供給不足の事態に直面した。OPEC諸国とロシアの思惑(裏取引)もあると思うが、原油・LNG、石炭の価格が乱高下している。運搬船等輸送手段の不足や船員・港湾労働者・トラック運転手不足などは、致命的難題である。
欧州、ロシアLNGの供給問題で揺れている。米国はガソリン価格急騰に端を発し、今は電力不足に直面している。中国・インドも寒い冬を迎え、電力不足・燃料不足が社会問題になりつつある。
特に北京冬季五輪を「クリーン・エネルギー」での開催をアピールしている中国、電力不足問題は屈辱的だろう。人権問題・台湾問題等で喧嘩状態になっているオーストラリア、中国にとっては最重要の石炭供給国である。オーストラリア以外の国から石炭を手当てしないと石炭火力発電に支障をきたす。
11月に開催されたCOP26、期待に反し「具体的進展」は無かった。せめての救いは、数カ国が「石炭火力発電の削減」、若しくは「廃止」を宣言し、再生可能エネルギーの「積極的取り組み」を宣言した事くらいだろう。中国でさえ、石炭火力発電削減・停止計画の具体的達成目標年まで明示し発表した。計画だが・・・。
しかし、年末になり、欧米各国及び中国は、「休止中の石炭火力発電再稼働」を発表した。「電力不足と言う国家的危機対応として致し方ない」と説明している。だが、「LNGより石炭の方が安い」と言うのが「本音」だろう。
米国の今年度の石炭火力発電は7年ぶりに増大、前年比22%増になると発表された。中国とインドでも増え、2021年度の「世界の石炭火力発電量は過去最大」になると予想されている。
世界のエネルギー需要は年々増える。「コロナ禍」・・・、先が読めない。米中覇権争い・・・、当分収まりそうもない。ロシアの復権? LNG供給がどうなるのか、ロシアLNGに頼る欧州各国の経済政策に大きな影響を与える。CO2 排出量削減で大見得を切ったバイデン、今度は石炭火力発電所再稼働、どの様な「言い訳」をするのか? 内外からの批判は避けられないだろう。そして中国習近平も同じ穴の狢、環境に対する報道規制を厳しくするのだろうか?
COP26の方向性は? 各国の発表をあざ笑うかの様に、現実の世界は「逆行」、温暖化を助長しつつある。石炭火力再稼働を「一過性の緊急策」と「言い訳」するかも知れないが、所詮「言い訳」、自然は「人間の戯言」に耳を貸さず、「自然の流れ」に流されていく。その流れは日に日に、そして年々、激しくなっている。「人間が止められる限界を既に超えている」と言う人もいるが・・・。コロナが為す「悪戯」だろうか?
来年はどうなるか? 兎も角、いち早く「コロナ」が終息してもらいたいものだ。